……おお朋だちよ いっしょに正しい力を併せ われらのすべての田園とわれらのすべての生活を一つの巨きな第四次元の芸術に創りあげようでないか……
宮沢賢治『農民芸術概論綱要』「農民芸術の綜合」より
古今東西の少なからぬ芸術家が、みずからが暮らす地域の風土や文化、人びとの生活のありようと深く結びついた芸術を構想し、人びととともにそれを創りあげ分かち合うことを夢見てきました。詩人、童話作家の宮沢賢治も、上に引用したとおり、そうした夢を抱いた芸術家の一人であり、一例をあげれば花巻農学校で教師をつとめていた時代に、彼は戯曲『ポランの広場』を書いて、夏祭りのなかで学生とともにそれを上演したのでした。
開館10周年をむかえる今シーズン、キラリふじみは"地域で暮す人びと=市民"、そしてその生活と強い結びつきをもった舞台芸術を創造し、上演することをめざします。
そうした活動をつうじて、宮沢賢治が『ポランの広場』で失われた理想郷として描きだしたような、芸術が人々の暮らしを豊かにし、人びとの暮らしが芸術を豊かにする相互作用を孕んだ〈広場=劇場〉へと、キラリふじみの機能や役割を発展させていきたいと考えています。ただし、それは到達すべき理想なのですが、実現困難な理想でもあります……。
こうした目標にむけてキラリふじみの進路を切り開いていく先導役は、昨シーズンに引き続いて、多田淳之介芸術監督と5人のアソシエイト・アーティストたちです。そこに俳優、ダンサー、サーカス・パフォーマー、音楽家といった多彩なアーティストが外部から加わります。
そして昨シーズンにも増して、私たちは"地域で暮らす人びと=市民"の参加と支援を必要とし、期待しています。キラリふじみという〈広場=劇場〉をともに創りあげてくださる「朋だち」のご参加、ご来場を心よりお待ちしています。

昨シーズンは、日本人としても芸術家としても"わからない"ということについて考えた一年でした。私たちはこの"わからない"がどうも苦手です。芸術とは、わかる人だけにわかるものではなく、"わからないもの"との出会いです。"答え"はありません、自分の"応え"と出会うことが芸術なんだと思います。今の日本も"どうなるかわからない"ことが増えました。でも本当は昔から答えなんて無くて、だから芸術はずっと私たちの近くにあったのでしょう。
昨シーズン、レパートリーとして創作した『あなた自身のためのレッスン』は"応えること"を描いた作品でした。今シーズンも再演があります、皆さんの今年の"応え"を楽しみにしています。市民コンサート『地球のことづて』では、芸術を通じて私たちがこの土地で活き活きする姿、その力を、素晴らしい音楽と共にお届けします。レパートリー新作としては『ハムレット』を創作します。「To be or not to be, that is the question」という有名な台詞があり、「復讐をすべきか、しないべきか」「生きるべきか、死ぬべきか」「世にあるものか、ないものか」と様々に翻訳されています。果たして今の私たちは何の選択に迫られているのでしょうか?
富士見で活動を始めて4年、様々な方と出会い、様々な出会いにも立ち会いました。そこには昔から変わらない大切なものがつまっています。生きていくのが難しいなんて言われますが、そうは思いません、芸術の力、ひとの力はどんな時代も乗り越えてきたのですから。今シーズンも、ひとの力を信じて活動していきます。
キラリふじみは、5人のアソシエイト・アーティストと舞台芸術の創造を中心としたプロジェクトに継続的に取り組んでいきます。










