今シーズンのディレクション アソシエイト・アーティスト

キラリふじみとは

芸術監督 多田淳之介

ボーダーライン

 昨シーズンから始まったリージョナルカンパニーACT-Fは、世界的にも珍しいアウトリーチに特化した劇場付きカンパニーというキラリふじみの新しい試みでしたが、初年度にも関わらず、子育てサロン、幼稚園、特別支援学校、難波田城公園、飲食店、ハロウィン、新年会など市内の様々な場所、イベントで活動することができました。新年度も地域へ芸術を届けるだけではなく、地域と手をつなぎ、地域で生まれる人の繋がりを大切に活動していきます。

 近年の日本では様々な格差も顕在化し、社会は分断化の傾向にあります。同一、単一を求め枠を作ること、日本にもいわゆるムラ社会文化があり、動物学的にも人類の生存戦略は社会形成と言われています。社会を形成すると同時にその外側にはボーダーラインが生まれます。同一化、分断化は一見すると人間本来の営みのようにも思えます。

 しかしその一方で我々人間は一人一人が多様であり、同一ではありません。社会を作ることは同じ人たちが集まるのではなく、お互いの違いを認め、個人というボーダーラインを超えて手をつなぐことから始まります。そして手を取り合えない人たちを排他、攻撃するためではなく、手を取り合えない人たちとどうやったら手を取り合えるのかを考えるために社会は作られているのです。そうでないと人類は滅びてしまいますから。

 しかし歴史を振り返ると、多様性を否定し、分断化、排他によって人類が何をしてきたのかは小学生でも知っています。長い歴史をかけても変わらないこともあるかも知れませんが、人類の歴史なんてたかだか数百万年、群れを作って攻撃するなんて動物でもできます、まだまだ人類の可能性を信じても良いのではないでしょうか。

 今シーズンから新しい試みとして海外との共同制作シリーズが始まります。アーティストたちが手をつなぎ、その作品を通じて人間はどんなボーダーラインも超えて手をつなぐことができるということを感じてもらえたら嬉しいです。分断も、格差も、差別も世の中にはあります、しかし人間はそれを超えられる。芸術は人間の良い部分も悪い部分も認めて、人間を信じる力を与えてくれます。人間が歴史の中で生み出し受け継いできたこの財産を、大切に未来へ受け継いでいければと思います。


館長 松井 憲太郎

新たな領野にむかって

 今シーズンから、二つの新たなコラボレーションのプログラムが始まります。

 東南アジアの演劇やダンスと当館のアーティストたちによる〈国際的な舞台作品の共同制作〉と、富士見市の農と食の分野で活躍する市民と当館が協働する〈地域の新しい祭りづくり〉の活動です。

 昨年来、これらの準備を進めるなか、多くの方々との貴重な出会いがありました。そこで気づかされたのは、東南アジアのアーティストたちと、富士見で活動する市民が、国や文化の違いを越えて、大きく共通する視点や姿勢をもって自らの仕事に取り組んでいることでした。

 両者は、それぞれの地域で暮らす人びとが抱える社会的な課題や問題を直視して、社会の現状についての深い認識を獲得していきます。そのうえで、その地に蓄積された文化的な記憶や財産を活用した活動を通じて、それらの課題や問題を人びとがともに乗り越え、社会をより良いものへと変革していくためのビジョンや関係づくりの場と機会を創りだしていきます。

 地域の〈固有性〉に徹底してこだわりぬく両者のそうした視点や姿勢は、より良い社会の形成にむけて世界の各地で展開される市民の種々の活動の、一つの〈普遍的〉なあり方と可能性を示唆するものといえないでしょうか。

 さて、二つのコラボレーションのうち、〈国際的な舞台作品の共同制作〉では、今シーズンはアソシエイト・アーティストの白神ももこが、タイの現代演劇とダンスのアーティストと、互いの社会のあり様をヴィヴィッドに反映させた作品を制作します。来シーズンには、多田淳之介芸術監督がインドネシアとマレーシア、再来年のシーズンには田上豊がフィリピンの現代演劇とのコラボレーション作品で続きます。

 もう一つのコラボレーション、「ふじみ 大地と食の祭り(仮)」では、市民が地域の伝統芸能を土台に新たな〈郷土の芸能〉を創作上演するなかで、市内産の農作物を素材に創作した〈郷土の料理〉を分かち合い、大地の恵みを祝いながら、地域でともに生きることの意味や可能性の再発見を試みます。

 さらに、アソシエイト・アーティスト同士がコラボレーションする永井愛作、田上豊演出の『僕の東京日記』など、新たな挑戦が満載のキラリふじみのプログラムに、どうぞご期待ください。


アソシエイト・アーティスト

キラリふじみは、5人のアソシエイト・アーティストと舞台芸術の創造を中心としたプロジェクトに継続的に取り組んでいきます。