トッパンホールのプログラミング・ディレクター西巻正史が、キラリふじみのために企画を続けるクラシックコンサートシリーズ。今回は、旬の若手演奏家3人が奏でる豊かな響きをどうぞご堪能ください。
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キラリふじみニューイヤーコンサートは、年に1度の大切なクラシック主催公演だけに毎回旬の若手が室内楽に熱く取り組む様を聴いていただきたく、ここ数年、四重奏や五重奏をメインに配し、多くの奏者を紹介してきた。今年は趣向を変えて、出演者を最小限に絞り、室内楽の奥深さと華やかさを併せ持つと言われるピアノ・トリオをメインに据えた。ピアノ・トリオという形態は、大きく二つのスタイルが存在する。ヨーロッパをルーツとする気の合う音楽仲間がじっくりと時間をかけて作り上げる手法と、第二次大戦後アメリカから流行した人気ソリストを3人集めての豪華なパフォーマンスとしてのスタイルだ。若手の人気アーティストにじっくり4か月かけて取り組んでもらう今回は、その折衷に位置するのかもしれない。コンサート前半には、チャイコフスキーと同じくロシアの作品を配し、ヴァイオリンとピアノ、チェロとピアノでアンサンブルをきっちり作ってもらうことを狙った。
ラフマニノフのチェロ・ソナタは、彼が遺した室内楽の最高傑作。各楽章に忘れ難い名旋律がちりばめられ、高度なテクニックを必要とするピアノとチェロが朗々と紡いでいく。チャイコフスキーと並ぶロシアのメロディメーカーであるラフマニノフの面目躍如な作品だ。チェロとピアノの高度な融合が必要なため、なかなか名演に出会うことがない難曲でもある。
プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタは、もともとフルートとピアノのための作品として作曲され初演されたもの。初演者リヒテル、名ヴァイオリニスト、オイストラフという20世紀を代表する演奏家の要請を受け作曲者自身がヴァイオリン・ソナタに編曲した。オリジナルがフルート曲なので、プロコフィエフにしては単旋律を主体にした美しいメロディーが魅了される。しかしそのパートがヴァイオリンに替わることによってメロディラインの美しさはキープしながらも音楽の陰影が増し、プロコフィエフらしい諧謔味などもより効果的に活かされ魅惑的な楽曲に仕上がった。いまやフルート・ソナタとしてよりも遥かにヴァイオリン・ソナタとして知られ、多くのヴァイオリニストに欠かせない重要なレパートリーとなっている。
チャイコフスキーの大作《偉大な芸術家の思い出に》は、彼が尊敬したアントン・ルビンシュタインの死を悼んで作曲されたもの。ロシアでは偉大なる先人の死に際してピアノ・トリオ作品を捧げる習慣があったという。そんな背景のためか、気宇壮大で美しいメロディをベースに変奏曲の手法も存分に駆使した魅惑的な作品。じっくり取り組めば取り組むほど味がでる曲だけに、3人では初共演となる周防、笹沼、五十嵐の練り上げたスケール豊かな演奏にご期待ください。
西巻正史(トッパンホール プログラミング・ディレクター)
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【出演】
ヴァイオリン: 周防亮介
チェロ:笹沼 樹
ピアノ:五十嵐薫子
【曲目】
◆プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ長調 Op.94bis
[Vn:周防亮介 Pf:五十嵐薫子]
◆ラフマニノフ:チェロ・ソナタ ト長調 Op.19
[Vc:笹沼 樹 Pf:五十嵐薫子]
◆チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 Op.50《偉大な芸術家の思い出に》
[[Vn:周防亮介 Vc:笹沼 樹 Pf:五十嵐薫子]
企画 西巻正史(トッパンホール プログラミング・ディレクター)
企画協力 トッパンホール
お問い合わせ 富士見市民文化会館キラリふじみ 049-268-7788
主催 公益財団法人キラリ財団
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- 日程
2025年1月19日(日)
- 開演時間
15:00開演(14:30開場)
- 会場
メインホール
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