年間プログラム

2016年04月01日 - 新しい広場―境界を越え 人と人を つないでいく

 

 

M 劇場法*の前文では、劇場は〈新しい広場〉と位置づけられています。キラリふじみも、市民が集まって交流しながら、お互いの魅力を発見できる〈広場〉のようになれないかと考えていました。ぼくが1980年代に劇団黒テントで旅公演をしていた頃は、行く先々のまちに、文化や芸術の分野でおもしろい活動をしているまちの人たちの〈溜まり場〉がありました。具体的には、ジャズ喫茶や居酒屋とか、世代も職業も様々な人たちが一堂に会して、それぞれの考えをぶつけあって、まちの中に新しい動きを生みだそうとしていた。ここに来た時、富士見市にはそういう〈溜まり場〉が見あたらないなと思いました。でも、これは全国に広がっている現象で、〈溜まり場〉がまちから消えたんだとしたら、それに代わる役割を劇場が果たさなくてはと考えて、まずは『キラリふじみのアトリエ』を市民の対話の場づくりのつもりで始めました。多田さんが『こどもステーション』を始めたのと、同様の目的意識があったんです。

T ここ数年、キラリふじみは、地域の人たちといろんな角度からつながりを作っていこうとしてきたんじゃないかと思っています。

M 2012年にスタートした『サーカス・バザール』は、そこに特化したイベントで、〈芸術文化〉にとどまらず、〈生活文化〉という間口や奥行きのある領域に、キラリふじみの活動を拡げていくための挑戦でもありました。全館でサーカスのパフォーマンスを上演して、地元の農家や飲食店などの人たちがバザールに参加するこのイベントでは、ぼくらと市民の様々な出会いがあって、本音で話しあえるような関係を結ぶことができました。それを土台に、農業と地域文化の関係について市民の人たちと議論する『シンポジウム』や、子どものための地域づくりの活動と劇場が連携する方法を話しあう『フォーラム』などをやってきました。今シーズンは、富士見市の〈食文化〉について議論する『アトリエ』や『フォーラム』を計画しています。

 

 

T キラリふじみが地域の劇場として成長するためには、このまちに暮らしている人たちと直接つながって、その人たちが力を発揮できる場になることが大切なんだと思います。ぼくらはふたりとも外から来たわけですが、ぼく自身も富士見でのいろいろな出会いで成長しましたし、関わってくれた市民の方同士もつながりを拡げてくれている。つながることによって、その人が力を発揮する場や可能性がものすごく拡がるんだなということも実感しています。

M ぼくは、最近はいい意味でアウトサイダーの役割を果たせたらと考えています。富士見というまちの境界に視点をすえて、外側と内側をつなぎながら、なにか新しいものがまちの中に生まれる手助けをする、そういうアウトサイダーならではの触媒みたいな役割・・・。このまちの人は、よく「富士見には売りものがない、個性も特徴もない」と言いますが、ここには独自の哲学をもって、ユニークな仕事をしている人たちが大勢いる。そういう人材はすばらしい財産だし、ぼくのようなアウトサイダーだからこそ見えてくる、このまちの個性です。

T マレビトであり続けることは、大事だと思います。

M マレビトといえば、多田さんは最近、海外も含め、外に出かけていく仕事が増えましたね。

T それでも、年の半分は富士見にいると思いますよ。(笑)

M 多田さんが外からもち帰ってくれるものは、大きな刺激になっている。去年の日韓共同制作の『颱風奇譚』は、まさにそういう刺激から生まれた作品です。

T 富士見の内と外を行き来して、いろんな人やものをつないでいきたいです。演劇は人をつなぐためのものだと思ってやってますから。(終)

 

*劇場、音楽堂等の活性化に関する法律(2012年6月施行)


※「2016.04-2017.03のディレクションを語る」全文は
こちら【PDF】

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