年間プログラム

2020年12月14日 - 【出演者インタビュー】ニューイヤーコンサート2021:ピアニスト・大崎結真さん

 

 

■ピアノを始めたきっかけは?

「音楽を自ら奏でることができるなら人生はきっと楽しいに違いない」という母の思い込みがすべての始まりです。近所に音大を卒業されたピアノの先生がいらして、一人でも通えるということもあり、3歳10ヶ月から習い始めました。その後、女流ピアニストのマルタ・アルゲリッチの一枚のアルバムに、聴く者の心を動かすことのできる音楽の強さを体感することになり、私もいつかこんな演奏をしてみたいという思いがピアノに向かわせました。

 

■プロのピアニストを目指そうと思ったのはいつごろ、どんなきっかけから?

中学生の時、若い音楽家のための国際コンクールに参加し、世界の同年代は、技術的にも内容的にもその年齢をはるかにこえた大曲難曲に果敢に挑み、作品の芸術性にまでにじり寄っている、その現実に衝撃を受けました。ピアノを学ぶ10代の若者ではなく、「自分はピアニストである」という明確な自負と、それを支える努力の量が圧倒的に自分と違う…その自覚がターニングポイントになったのだと思います。

 

■留学のきっかけ、留学で得たもの

高校時代に、イタリアのイモラ音楽院のスカラ教授のマスタークラスを受講する機会がありました。その時、最初に私に与えてくださった気づき、ピアノという巨大な楽器を美しく響かせるために一番大切な「自分の音に耳を傾けること」を、もっとスカラ教授の下で学びたいという一心で留学を決意したので、不安を感じるより猪突猛進していました。当時のイモラ音楽院の学生は、あらゆる一流国際コンクールの覇者ばかりで、学校で練習をしていると両隣から素晴らしい音楽が聞こえてくる…彼らの一音一音に対する凄まじいほどの意識を、よく壁越しに盗み聞きし学びました。
音符を音にすることがたちまち「音楽」になるわけではありません。作曲家が作品に託したことを推察し、その推理を音ににじませることではじめて生きた音楽が生まれます。西洋に生まれた音楽を深く探ってゆく、このミステリーを解く鍵もまた西洋にたくさんあったと、留学中のすべてがかけがえのない経験と思っています。

 

■今回のコンサートタイトルは「いつも中心(センター)にピアノがあった」です。きっと大崎さんの人生にも、いつも中心にピアノがあったのではないかと思います。そんな大崎さんの考えるピアノの魅力とは…?

いろいろな楽器の模倣から鳥のさえずりや心臓の鼓動まで、ピアノの88鍵は万物を表現する無限のパレットだと思い、そこに魅力を感じていました。
例えばモーツァルトは、ある同じ一音を繰り返すという一見単純なフレーズ(音楽における文章のようなもの)に、時の経過=生命のカウントダウンを感じさせるような、そんな想像を呼び起こします。ベートーヴェンは、それまでの“ピアノのソナタ“というジャンルに変革と重要性を!という思いを込めて、弦楽四重奏曲や交響曲に比肩する「10本指の下の交響曲」を志向しました。
学ぶ作品が増えるにつれて、大作曲家たちによって拓かれた哲学的な暗示や楽器の可能性を感じることも増え、私が感じるピアノの魅力も拡大し続けています。

 

■今回演奏される3人の作曲家の作品の聴きどころを教えてください!

今回私が演奏させていただくのは、古典派からロマン派へ、この時代の変遷において最も重要な作曲家による、“幻想”という糸で貫かれた作品です。それぞれの作曲家たちが「個」を根幹として、いかにして自由な発想を作品に膨らませたか、お聴きいただけたら嬉しいです。

 

■最後に、富士見市の方へメッセージをお願いします!

私の生まれ故郷である富士見市で今回、演奏の機会をいただき、大変嬉しく思っています。2歳まで家族で暮らしていた富士見市について、両親から改めて聞いた思い出話により、自分の記憶にないはずの街の雰囲気、駅前の風景、そこに暮らす皆さんの様子が、私の中でとても鮮やかによみがえるかのようです。私の大事なふるさとが、キラリと輝く美しい街に発展し続けていることを大変誇らしく思っています。当日、ご来場くださる皆さまとのご縁も感じつつ、音楽をお届けできればと思っています。

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