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2019年09月21日 - キラリ音楽祭 矢野誠プロデュースfinal『音楽の中へ』:ひらたよーこさんインタビュー

10月20日に開催する「キラリ音楽祭 矢野誠プロデュースfinal『音楽の中へ』」。
第一部では谷川俊太郎さんの詩の世界をひらたよーこさんの歌とともに紡ぎ出す『少年』、第二部では合唱組曲『地球のことづて』を上演します。
今回は第一部に出演するひらたよーこさんへ「少年」についてお話を伺いました。

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ーどのような詩を歌うのでしょうか?

谷川俊太郎さんの詩集『私』の中に収められている12の詩からなる連作「少年」を歌います。「少年」12詩に加え、同詩集に収められている「不死」という3つの詩からなる連作の2つ目の詩「兎と」も最後に歌います。


「クレーの天使」ひらたよーこ+矢野 誠
朗読:谷川俊太郎
2011年11月16日(水)渋谷CLUB QUATTRO

 

ー歌の主人公は?

主人公は一人の少年(少女)です。「年とった少年」という表現もでてきますから、谷川俊太郎さんご自身とも言えますし、詩を受け取る私たち一人一人とも言えるのではないでしょうか。

 

ーどんなことがテーマになっていますか?

広い野原にぽつんといる少年。宇宙の中のちっぽけな自分。テーマはたくさんありそうですが、そのひとつは「孤独」だと感じて歌っています。

 
初演時のポスター
design by 深澤研

 

ー矢野誠さんとの合作というアイディアはどこから?

「あなんじゅぱす」というバンドで、正岡子規の短歌から谷川俊太郎さんの現代詩まで、近代から現代までおよそ100年の間に書かれた日本語の詩や短歌にオリジナルの曲をつけて歌うという活動をしています。バンドのメンバーの大光ワタルさんから矢野さんをご紹介いただき、ライブでご一緒したのが最初の出会いでした。以前から矢野さんのアルバム「摩天楼のヒロイン」「噫無情」他、友部正人さんとのコラボ「雲のタクシー」の大ファンでしたから、とてもうれしかったです。矢野さんも日本語の歌を追求されていて、谷川さんの詩にも曲をつけられていたので、きちんとした形で合作させていただけたらということになり、それなら「少年」はいかがでしょうとご提案しました。連作の中には自分には作曲は無理かなと感じた詩もあるけど、矢野さんなら曲をつけていただける予感がありました。それに矢野さんにはなんだか「少年」ぽいイメージがありました。

 

ーお二人で作曲をされていますが、どのような共同作業だったのでしょうか?

実際に曲をつけはじめたら、詩の争奪戦のようになりました(笑)。劇団のフランスツアーの滞在先の宿に矢野さんから譜面が届いたことも。長距離列車の中で譜面を読んだりしてワクワクしました。それが最初に完成した「あのひと」でした。これはうかうかしていられないと、フランス人のお友だちの家でピアノをお借りしたりして、わたしも負けずに滞仏中に作曲しました。それが二曲目に完成した「いのちの草むら」です。同じ曲を二人で作曲したこともありました。最初のAメロを私、Bメロを矢野さんがと決めたのに、先にBメロを矢野さんが作曲されてたりして。矢野さんのBメロは4拍子で、私が準備してたAメロは3拍子でしたので、「わたしのAメロを聴いてから作曲してくださいよ」とお願いしたら、「大丈夫、大丈夫。Aメロを4拍子にしてみて」とのこと。「ええ~~」と思いながら4拍子になおしたら、そのほうがよかったりして(笑)そうして完成したのが「兎と」です。


「クレーの天使」ひらたよーこ+矢野 誠
朗読:谷川俊太郎
2011年11月16日(水)渋谷CLUB QUATTRO

 

ー矢野さんとキラリふじみの出会いのきっかけとなった、「少年」の公開リハーサルについて教えてください。

9年前、ちょうどこのキラリふじみのメインホールで公開リハーサルを行いました。「少年」12曲の作曲がようやく完成したころです。当時キラふじみでやっていた若手芸術活動トライアル市民還元事業に応募して公開リハーサルをしてみたらいかがでしょうと私から提案させていただきました。矢野さんははじめまったく乗り気でなく、「そんな習慣はない。リハーサルは公開しない。」の一点張り。あきらめたころに「まあ何でも試してみましょう。」と。当日になって「やっぱりやめましょう」と言われるんじゃないかとドキドキでしたが、そんな心配をよそに素晴しい時間となりました。キラリふじみの音響の方は演奏しやすい環境にしてくださったし、照明スタッフの方は、一緒にいろいろ考えてくださり、「モノクロの世界で、最後の曲だけ夕焼けにというのはできますか?」という矢野さんの提案を形にしてくださいました。ホリゾンが夕焼けのように染まって、初めて「少年」の姿が立ち現れてくるようでした。演奏が始まったら、客席に松井館長のお姿が。後日、松井館長からお電話いただき、アソシエイト・アーティストとして矢野さんにキラリふじみで活動してもらうことを考えていますとのこと。矢野さんのピアノにひらめきを感じられたとのことでした。矢野さんのキラリでの9年間の活動の集大成として、9年前に公開リハーサルをした同じ舞台で「少年」を演奏させていただきます。なんだかすでに胸が一杯ですね(笑)

 

ー最後にお客様へメッセージをお願いします。

一冊の詩集とともに広い野原に座って、たった一人でぼんやりと空を眺めているような…、そんな一時間をお楽しみいただけたら。あるいは、プラネタリウムで三万年前の星を見たり、遺跡に一人で座っているような…、そんな日常の中で不思議に深い孤独を感じていただけたらと祈りつつ、準備させていただいております。

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「少年」の音源が下記URLより一部ご視聴いただけます。

http://midiinc.com/cgi/contents/commodity.php?a=274
※Adobe Flashが必要となります。

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公演写真
2011年11月16日(水)渋谷CLUB QUATTRO
「クレーの天使」ひらたよーこ+矢野 誠
詩:谷川俊太郎『クレーの天使』全18篇
曲:矢野 誠、ひらたよーこ
出演: 矢野 誠(ピアノ) ひらたよーこ(歌、キーボード、ジャンベ) 水谷 紹(コーラス、サックス、ギター)
    谷川俊太郎(朗読)

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矢野誠8時間ロングインタビュー『音楽の中へ』
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