橋爪功がうみだす、傑作ドラマの世界。
日本演劇界屈指の名優であり、語りの名手としても名高い橋爪功による朗読企画が今年も登場します。
第6弾となる今回は、都会的な感覚で時代を見事に切り取り、多彩な才能を持ちながらも夭折した作家・山川方夫の珠玉の短編『お守り』と、代表作『死の棘』をはじめ実体験をもとに描きながらも、私小説を超えて独自の世界を築いた島尾敏雄の『鉄路に近く』を朗読します。
人間の心の機微を深く表現して、聴く人の想像力を限りなく掻き立てる橋爪功。今回も演劇集団円の気鋭の女性演出家、内藤裕子とタッグを組み、たった一人の俳優の朗読とは思えない濃密でダイナミックな演劇空間を創りだします。
キラリふじみでしか見ることの出来ない特別な一夜をどうぞお見逃しなく。
◎作品解説◎
山川方夫『お守り』 建築会社に務める関口は、妻と一緒に念願の新しい団地アパートに住んで半年、なぜか不安やいらだたしさ、自分自身が行方不明になったような恐怖を感じはじめていた。こんな状態になった直接のきっかけは、宴会で帰宅が遅くなった夜、前を歩いていた自分そっくりの「黒瀬」という男だった。 1960年「北海道新聞」(日曜版)などに発表。次々に「団地」が誕生した戦後日本の高度成長期を背景に書かれ、その後海外にも紹介された。
・山川方夫(やまかわ まさお) 〈1930年~1965年〉小説家。父は日本画家 山川秀峰。東京上野生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業後、田久保秀夫らと「三田文学」を復刊、編集に参加。新人発掘に力を注ぎ、江藤淳、曽野綾子らを世に送る。戦後の青春を自伝的に描いた『日々の死』で注目を集め、『その一年』などで文壇に登場。洗練された短編を得意とし、ショート・ショートの分野でも活躍、将来を嘱望されたが、1965年交通事故で死去。
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島尾敏雄『鉄路に近く』 従順な妻ミホは夫トシオの不実が発覚したことをきっかけに、嫉妬のあまり心を痛み、心因性発作を患う。ミホは激しい愛情の感情に揺さぶられ自殺を図ろうと、夫が不在のうちに家を出てしまう。夫は不安と焦燥に駆られながら妻の姿を街中探しまわるー。 1956年「文学界」に発表。長編小説『死の棘』をはじめとする、妻との間の心のゆれや家族間のことを描いた「病妻物」と呼ばれる作品群のひとつ。本作は、妻の病気療養のために奄美大島移住後、最初に発表された作品。
・島尾敏雄(しまお としお) 〈1917年~1986年〉小説家。神奈川県横浜市生まれ。第18特攻隊の指揮官として奄美群島加計呂麻島に赴任。出撃命令を受けたが発信命令がないままに終戦を迎える。戦後、戦争中の体験を描いた『島の果て』『出孤島記』や超現実主義的な『夢の中での日常』などを発表。さらに家庭生活を描いた代表作のひとつ『死の棘』などの小説のほか、日記、詩、対談、紀行文、文化論などを生涯書き続けた。私小説的方法によりながらも日本的リアリズムを超えた独自の作風を示した。
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出演 |
橋爪功 |
スタッフ |
演出:内藤裕子
照明:佐々木真喜子(ファクター) 音響:穴沢淳
衣裳:カナイヒロミ 舞台監督:庄山彰浩
宣伝美術:松井雄一郎
協力:演劇集団円、円企画 |
お問合せ |
富士見市民文化会館キラリふじみ 049-268-7788 |
主催 |
公益財団法人キラリ財団 |
備考 |
平成28年度文化庁 劇場・音楽堂等活性化事業 |
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