年間プログラム

2016年04月01日 - 舞台芸術の扉―体験し 想像し 開かれる世界へ

 


M 平田オリザさんが初代の芸術監督の時代から、キラリふじみはワークショップやアウトリーチ活動にとり組んできて、多田さんも力を注いでいます。

T ぼくも芸術監督になる前から子どもの企画にも参加していたので、ワークショップに参加してくれた小学生が、中学生になって台本を書いたから添削してほしいともってきたり、低学年の悪ガキが高学年になって引越しの挨拶に来たり、もう10年以上、富士見の子どもたちを見てきているので、子どもへの思い入れは強いです。最近も小学生の時に作品に出てくれた子が、高校生になって矢野誠さんの市民参加型コンサートに参加してくれて、今はミュージカル俳優を目指す大学生になって、2月の矢野さんのコンサートにも出演して、新聞に取材されるまでに!

 開館以来続けてきた子どもたちのプログラムが、この数年で実を結んできていると思います。

 2013年からはさらに入り口を広げたくて『こどもステーション☆キラリ』を始めました。基本的にぼくが進行役で、月イチで土日の午前中に子どもたちとひたすら遊ぶ。小学生むけの演劇ワークショップは『えんげきをつくろう』がありますが、まずは遊びに来てもらって「キラリふじみで遊んで楽しかった」と思ってもらいたい。それは〈地域の原体験〉にもつながりますし、劇場や芸術そのものに出会うきっかけになってほしい。たいてい鬼ごっこしたり絵を描いたり工作したり、演劇は全然やってません。(笑)ただ、初めての友達と楽しく遊べたら、その次は演劇も楽しく作れます。現実に、遊びに来ていた小学生が、中高生の演劇ワークショップ『ツナがる演劇』『市民劇』など、他のプログラムに参加する流れも生まれています。

 子どもに限りませんが、ひとつのワークショップに参加した人が次のステップに進みたいと思った時、それに応えられるプログラムがあるかどうかが大事だと思っていて、その流れができ始めたのはうれしいです。入り口として『こどもステーション』があって、リージョナルカンパニーの『ACT-F』の活動が地域への出口かもしれないし、その途中にも、小学生や中高生向けの『ワークショップ』や、永井さんや田上君の『リーディング』など、いろいろなプログラムが枝分かれ的に用意されている。

M 小中学校へのアウトリーチ活動では、多田さんとアソシエイト・アーティストのワークショップに加えて、3年前から万作の会の『狂言ワークショップ』を中学校で始めました。昨シーズンは喜多流の能楽師の塩津圭介さんにお願いして、『能楽ワークショップ』を小学校でやりました。塩津さんの解説を聞いていて興味深かったのは、能では観客の想像力がとても重要ですと強調されていた点でした。狂言師の方々もそれを力説されていて、伝統芸能が観客の想像力を重要視する姿勢は、現代演劇にも通じるものですね。多田さんたちは学校でのワークショップで、子どもたちが想像力を解放する状態をつくっていくでしょう。

T 学校でのワークショップは、そこが命です。たとえば絵を描いていて、人の顔を緑に塗ったり、学校では間違いだとされてしまうようなことも、ワークショップの場合は「おもしろいね、なんで緑にしたの?」と、子どもの発想を尊重することから始まります。正解/間違いという概念がない芸術の強みです。いろんな観点からものを見たり、発想したり、意見をいうことを学校で肯定してもらえないとしたら、子どもたちはどこでそういう経験をすればいいのか。それを考えると、劇場のアウトリーチ活動が地域で担える役割はあるんじゃないかと思います。 

 

※「2016.04-2017.03のディレクションを語る」全文はこちら【PDF】

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